シリーズものとしてドラマ教育について概要を解説してみました。
①ドラマ教育の概要
https://www.biba-labo.com/theory/20181014/
②ドラマ教育の系譜:Creative Dramatics
https://www.biba-labo.com/theory/20181021/
③ドラマ養育の系譜:Drama in Education
https://www.biba-labo.com/theory/20181028/
いったんシリーズの最後の解説として”improvisation=即興”をご紹介します。その名の通り、台本を演ずるのではなく、その場で出てきたアイデアをもとに演劇をその場でつくっていく演劇スタイルです。そしてそれを教育やビジネス研修に応用したものを応用インプロ、Applied Improvisationといいます。
個人的に理論や指導方法もび場の考え方と親和性が高く面白いので注目しているので、長くなっております。
◆Improvisation
1.背景(成り立ち)
創始者はイギリスのキース・ジョンストン(1933~)です。
子ども時代に学校に適応できなくなったジョンストンは東洋思想にのめりこみ、東洋思想が彼の思想のバックボーンとなります。
美術教師となった彼は小学校でいわゆる問題児のクラスを受け持つことになりました。そこで子どもたちの好奇心を刺激することで、文字を書けなかった子どもたちが驚くほど創造的な文章をかけるようになる姿を彼は発見しました。
その後、教師を離れたジョンストンは、1956年にひょんなことからイギリスの現代劇の劇場であるロイヤル・コート・シアターから劇作の依頼を受け頭角を現していきました。
劇作家チームをマネジメントすることになったジョンストンは、身のない議論に辟易とし、議論をせずに実際にすべて演じてから判断するというスタイルでチームを運営しました。これが即興演劇の始まりとなりました。
そして彼は即興演劇を演劇の一大ジャンルとして育てるとともに、教育などへの応用もしていきました。
2.目的及び学習内容
一言でいうと彼がインプロを導入する目的は、「創造性を育むこと」にあります。
彼の人間観の特徴は、大人を委縮した子どもと捉えることにあります。
×子ども=未成熟な大人
成長するとともに創造性がましていく
◎大人=委縮した子ども
成長するとともに創造性が失われていく
そして、創造性を考えるときのキーワードとして彼は、①自然発生・自然体・主体性(spontaneity)、②想像(imagination)を用いました。成長するととともに自然発生していた想像は抑圧されていきます。
では何が①自然発生(spontaneity)、②想像(imagination)による創造性を抑圧するかというと、社会的な心(Social Mind)です。社会的な心は様々な恐れを生み出すことで主体性を抑圧します。
様々な恐れが自分の中から自然に想像されたアイデアを自己検閲しブレーキをかけてしまいます。
◎様々な恐れ
A:失敗への恐れ・・・失敗を恐れるとリスクを回避し行動をしなくなります
B:評価の恐れ・・・自分の表現や行動を他者から評価されるようになると、こう見せたいという自己イメージができます。本当に思ったことではなく、相手に迎合するような表現になり主体性は抑圧されます
C:変化・未来への恐れ・・・人は変化を恐れ、変化するにしても自分の思い通りになるようコントロールします。外からの影響を恐れ、体を固め、外に開かないようにします。
D:見られることへの恐れ
3.手法の特徴
ジョンストンは、恐れを軽減できるよう、何度でも安全に「失敗」をできる環境をつくることを重視しています。そんな応用インプロにおける手法の特徴をご紹介します。
◎カリキュラム
ジョンストンは事前に授業計画を作らず、生徒の様子を見て、どうやったらよい刺激・時間をもたらせるかを考え即興で授業を作ります。
◎教師の態度・役割
ジョンストンは、人は直接他人を自然発生の状態に変えることはできず、教師・ファシリテーターは自然発生を阻害する問題を解決する間接的な支援しかできないと考えています。そのためにも教師・ファシリテーターが自然態で楽しみ、自分も失敗を恐れてはいけないと考えています。
◎教師と生徒の力関係
インプロの主要概念の一つに支配(リード)と従属(フォロー)という変数があります。この変数を常に意識し、自然発生な場を維持することが大事だと考えています。
◎段階をおった進め方
インプロのワークショップでは最初はリラックスした、最も危険がないところから入っていき、少しずつ恐怖に慣らしていきながら進んでいきます。
び場の重要視している安心安全の場をまず作る。それから失敗を恐れずにチャレンジする場を作る。この考え方にもあっているような気がしています。
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